発達障害関係の本・ご紹介Blog

~『パパはアスペルガー!』の副ブログ~ 発達障害に関する本の書評を、アスペルガー症候群の夫を持つ配偶者の視点から、書いて見ようと思います。

『特別支援教育』とは?

平成18年(2006年)、学校教育法の施行規則が改正され、小・中学校での『通級による指導』の対象児童・生徒に、LDとADHDが加えられました。
『通級による指導』とは?)


そして、平成19年度(2007年4月)より、特別支援教育の本格実施が全国の小中学校で始まりました。


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従来の特殊学級などによる『特殊教育』は、

 ・特別な「場」による特別な指導
 ・特別支援教育担当の教員が責任を持つ


でした。

対象となる児童生徒は、盲・聾・養護学校や小中学校の特殊学級などに在籍している児童生徒でした。



あらたに推進されている(されようとしている)『特別支援教育』とは、
 

・従来の特殊教育の対象児童生徒
  +学習障害・ADHD・高機能自閉症児が対象となる
 ・通常学級に在籍する児童生徒も『特別支援教育』の対象となる
 ・全校職員が責任を持つ(校内支援体制を確立して対応する)


というものです。
「気になる子ども」のサポ-トシステム [ 新井英靖 ]P13より要約)


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『特別支援教育』とは、障害の有無や障害の種別によって教育を分けるのではなく、ひとりひとりの子供の『個別の教育的ニーズ』に対応して教育していこう、という制度です。


一般的にいう『目が見えない』というくくりの中でも、全盲の子どももいれば、弱視の子どももいます。
ADHDであっても、始終立ち歩く子もいれば、比較的落ち着いて見える子もいます。

同じ障害の種別・障害名を持っていても、ひとりひとり必要な支援(教育的ニーズ)は違います。
また、障害を持っていない子供でも、その子供本人が勉強や学校生活を送る上で、困り感を強く持っている場合もあります。


そのような子供たち、ひとりひとりの『教育的ニーズ』に、個別に支援・対応していこう、というものが『特別支援教育』です。


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平成19年度(2007年4月)より、特別支援教育が全国の小中学校で開始され、これに伴い、各自治体で多少の呼び方の違いがありますが、
今までの

盲・聾・養護学校は、『特別支援学校』
特殊学級・通級指導教室は、『特別支援教室』

と名称が変わります。

もっとも、特殊学級は、『ひまわり組』ですとか、『おひさま学級』などの各校独自の名称が付いていると思いますので、特に変わった印象は受けないように思います。


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『特別支援学校』には、普通校よりも『特殊教育教諭免許状』言語聴覚士理学療法士などの資格を持った、専門知識のある教員が多く在籍して、長年の指導の積み上げによるのノウハウの蓄積もありますので、地域のセンター的な役割が期待されています。

例えば
『特別支援教室』や通常学級の教員への相談や支援
・教材や教具の貸し出し
・講座や研究会などの開催
・『個別の教育支援計画』作成の支援

(参考 ⇒ 『個別の教育支援計画』と『個別の指導計画』

などです。


以上簡単ですが、まとめてみました。



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『通級による指導』とは?

『通級による指導』とは、通常級に在籍しつつ、言語障害・情緒障害・弱視・難聴・吃音などの障害がある児童生徒に対して、必要な場合に苦手な部分を個々の障害の状態に応じて、個別、あるいは少人数で特別に指導を、『通級指導教室』で受けることのできる制度です。

平成18年度から、LD・ADHD児も、『通級による指導』の対象児童・生徒と認められました。

『通級指導教室』の設置状況は、各自治体でマチマチです。

各校に1学級以上が望ましいのですが、現実には1中学校区に1学級の割合でさえ、設置されていない地域もあります。(我が地域のことです…)

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『通級による指導』を受けるには、保護者が通常の授業時間中に(放課後の指導時間枠もありますが、すべての子供が放課後の時間枠を取れるわけではありません)、在籍通常級の教室まで子供を迎えに行き、『通級指導教室』の設置校まで連れて行きます。

1時間程度の指導を受けたのち、再び在籍校の在籍級まで保護者が送り届けます。

子供の状態によって、月に1回程度の通級回数の子供もいれば、週に数回通う子供もいます。


在籍校から設置校まで、片道2時間もかかる場合もあり(←我が自治体の現実です……)、子供と保護者の大きな負担になっています。

現在のところ、保護者以外の送迎が認められていないので、両親ともに働いていて祖父母などがいない場合、送迎ができないという理由のみで、必要な通級指導が受けられない児童もいます

中学生は、生徒のみで設置校へ通うこともできるようです。
が、我が自治体では中学生で通級している生徒はいないもようです。(←未確認です。すくなくとも中学校には通級指導教室設置校はありません)

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通級による指導の時間は、在籍校の授業に出席としてカウントされるので、遅刻や早退や欠席や単位不足などの扱いにはなりません。


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蛇足ながら…

私たち家族が住んでいる自治体は、基本的に情緒級という『通級指導教室』でしか、アスペルガー症候群や高機能自閉症児の指導を行ってくれません。

公立の小・中学校は、約160校ありますが、
一般の『通級指導教室』は7教室
情緒級は なんと2教室しかありません!!!

約160校に対して、合計で9教室しか『通級指導教室』が設置されていないので、単純計算で『通級指導教室』1学級で約17校に在籍する対象児童・生徒を受け持つことになります。

指導時間の枠も、指導のできる教員も、圧倒的に足りません。

ですので、『通級指導教室』での指導が必要な子供でも、受け入れてもらえない子供がたくさんいます。


そんな状況の中、比較的近くに『通級指導教室』設置校があり、指導が必要な対象児であるかどうかの(教育委員会による)審査にも通してもらった娘のチビひめは、本当に我が自治体ではまれにみるラッキーガールです。

娘は、指導担当の先生にも恵まれ、楽しく『通級指導教室』に通っています。


娘のように、特別な指導が必要な子供たちのすべてが必要な指導を受けられる日が、一日も早く訪れるように祈るとともに、保護者として、その実現のために、何かできることがあれば、少しずつ世の中に働きかけて行きたいと思います。



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『実践事例に学ぶ特別支援教育体制づくり』

地方自治の傾向は、政治・経済の世界だけでなく、教育界にもいろいろな変化をもたらしているようです。

地方独自の政策、地方独自の教育制度の整備…

特別支援教育本格実施元年の今年(2007年)、特別支援教育関連の話題が新聞などのメディアに掲載され、特別支援教育に関する書籍も、次々と出版されています。

この『実践事例に学ぶ特別支援教育体制づくり 23自治体の特色ある取り組みから』も、そんな中の一冊で、出版されたてホヤホヤの本です。

各地方自治体の、特別支援教育への独自の、あるいは先進的な取り組みの最新の情報が満載です。

各自治体の事例は、第三者ではなく行政の担当者が執筆しているようですので、報告書然としていて、読み物のようにスラスラ読み進めることができる…という感じではないかもしれません。
(私は読了するのに、かなり時間を要しました)

各自治体の事例の後には、その自治体の取り組みの特徴や独自な点やこれからの課題などが、編著者の柘植雅義(つげまさよし)さんによってコメントされています。


実践事例に学ぶ特別支援教育体制づくり [ 柘植雅義 ]
実践事例に学ぶ特別支援教育体制づくり [ 柘植雅義 ]

発行年月 2007年03月


みなさんの住んでおられる自治体は、この本の中で紹介されているでしょうか?

私の住む自治体は、この本に掲載されている自治体と比べて、まるでどこか遠い外国の話か、はたまた地球以外の天体の話かしら??? と思ってしまうほど、格差があることがはっきりとわかり、暗澹たる気持ちになりました。




我が自治体も、入手した特別支援教育への取り組みの計画段階の資料は、確かに素晴らしい体制に思われる、立派なものでした。

けれど、2007年5月現在、その計画の理念も、実際のサポート体制も、ほとんど稼動していません。

見事なまでの『絵に描いたもち』です……



それに引き換え、この本に掲載されている自治体では、実際に報告の通りに稼動しているとはいえないでしょうし、いろいろと不完全で不備な点もあるでしょうが、少なくとも
『特別支援教育が走り出している』
ことは間違いなさそうです。



この本の中には、自治体の規模の大きいところから小さなところ(人口にして100万人を超えるところから数万人規模のところ)まで、23自治体の例が報告されています。

おそらく、居住地に近い規模の自治体の事例を、どなたでも見つけられると思います。

自治体の規模によって、できること・できないこと・上手く稼動する体制など、いろいろ違ってくると思いますが、必ず参考になる事例がこの本の中に見つかると思います。

行政の腰が重い自治体にお住まいの方は、この本に掲載の、似たような規模の自治体の例を出して、
「○○市だって、これだけのことができるんですよ。うちも、これくらいのことはがんばって早期に実現してください」
くらいのことを、教育委員会なり、福祉課なりに懸けあってみてはいかがでしょうか?


結構、他の自治体の同じ職種の方の仕事を、知らない担当者が多いもので、保護者の方がいろいろ知識を持っていたりする場合も多いものです。

私は、忙しすぎて他の自治体の事例を調べる暇なんてない各関係機関の担当者に、
「こんな事例もあるそうですね」
と、この本の紹介程度のことを、やんわりと(←知ったかぶりの保護者と思われるとマイナスなので…)お話してみています。

行政と保護者がともに手を取り合って子供の教育について考える、ひとつも方法かもしれないと思いますから。


+++


最後に、この本の中で紹介されていた、北海道立特別支援教育センターのHP(ホームページ)が、非常に充実していて、いろいろな資料のダウンロードもできますので、ご紹介しておきます。


  ⇒ 北海道立特別支援教育センター


特に、ご自分の受け持つクラスの中に、特別な教育的ニーズのある児童・生徒がいる教師の方で、生徒・児童への具体的な指導の方法がわからないとお悩みの先生必見のサイトです!



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プロフィール
・アスペルガー症候群の夫:Qさん
・1996年生まれの息子:ノロリ
・2001年生まれのLD娘:チビひめ
との生活に、孤軍奮闘中。

メインブログの『パパはアスペルガー!』
で、いろいろ愚痴っています。
はじめにお読みください
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